日記、読書、映画。
機械之心
とりつくしま
2008年 04月 28日 (月) 00:01 | 編集
東直子の『とりつくしま』(筑摩書房)を読む。連作短編集。
死んだ人に、とりつくしま係が、とりつきたい物は何かと聞いてくる。物にとりついた人は、自分の好きな人の姿を見守ることができる。
「ロージン」では、母親がロージンバッグの中身(ロージン)にとりついて、息子の野球の試合を間近で見守るが、消耗品なので、あっという間にとりつき期間が終了してしまう。「青いの」とは公園の青いジャングルジムのこと。まだ幼い男の子のことなので、ジャングルジムという言葉は知らないが、その、青いのにとりついて家族を見守る。「白檀」では扇子なので、夏の間だけ。
「ロージン」のような極端に短いものもあるが、なんとなく、最長四十九日間ではないかと思っていたが、そうではないらしい。物を選べば長く見守れる。
薦められて読んだが、死者が生者への想いを切々と語るような、涙腺を刺激されるような話ばかりだろうと想像して、最初は及び腰だった。しかし、それは誤解だった。生きていようが死んでいようが、人間の個性や事情が様々なことに変わりはなく、作者も泣かせようとは(たぶん)思っていない。「くちびる」なんか、爽やかで汗臭い青春小説そのもの。好きな人のカノジョのリップクリームになりたいって、そんな。
しんみりしたり心温まったりする中に、ちょっと読んでいて苦しくなるのが混ざっていて、そのバランス感覚が良い。
番外編で「びわの樹の下の娘」が収録されていて、これは怪談っぽかった。ただ、作中に新右衛門という名前が出てきたら、古いテレビアニメ『一休さん』の登場人物を思い出して、気持ちが本編から逸れてしまった。
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