日記、読書、映画。
機械之心
ハンブルク
2007年 09月 24日 (月) 00:01 | 編集
ウーヴェ・ティムの『カレーソーセージをめぐるレーナの物語』(浅井晶子・訳、河出書房新社Modern & Classic )を読む。
ミュンヘンに住む「僕」は、ハンブルクの伯母と同じアパートに住んでいたブリュッカー夫人が露店で売っていたカレーソーセージ(カレーヴルスト)が、ベルリンあたりでよく食べられるカレーソーセージのオリジナルではないかと考える。今はハールブルクの老人ホームで暮らすレーナ・ブリュッカーを訪ね、トルテをご馳走し、七日に渡りカレーソーセージの始まりを聞く。カレーソーセージに至る語りは一九四五年四月二十九日日曜日から始まった。この日の午後、ヒトラーとエヴァ・ブラウンが結婚している。
最初はなかなかカレーソーセージに行き着かなくて、「僕」のようにブリュッカー夫人を急かしたくなるのだが、読んでいるうちにだんだんカレーソーセージに近付くのがもったいなくなっていった。確かにカレーソーセージに至るまでは、これだけを語らないといけないと納得する。端折れば五分で終わるかも知れないが、それでは肝心なことが伝わらない。
今は老いて髪も薄くなったブリュッカー夫人が、短いスカートがはけなくなるまでまだ何年かある、金髪の美女(しかも身長百八十センチ)だった頃に訪れた人生の転機と、その機を逃さずに生かす才覚。レーナ・ブリュッカーがただ者ではないのは、目が見えなくなっても、風景を編み込んだみごとなセーターを編んでいることからもわかる。
戦争は多くの人の人生に影響を及ぼさずにおかないが、一人の女性にカレーソーセージを発見させたのもその一つ。
カレーヴルスト、なんとなく、炒めたソーセージにカレー粉をまぶしたものだと思っていたが、読んだら、輪切りにしたソーセージを炒め、熱したトマトケチャップにカレー粉を混ぜたソースに絡ませたものだった。
訳者はあとがきで、名物だからとすすめられて食べたことはあるが、食べてがっかりしたと述べている。美味しいお店もあるようなので行ってみたい気もするが、またがっかりしたくないとも。その気持ちはわかる。記憶や想像の中の方が美味しいことは多々ある。
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