日記、読書、映画。
機械之心
『碁を打つ女』
2007年 05月 02日 (水) 00:01 | 編集
シャン・サ(山颯)の『碁を打つ女』(平岡敦・訳、早川書房)を読む。
一九三七年、満州国。英文学者の父を持つ裕福な家庭の娘である女子学生の「わたし」と、日本の陸軍士官である「私」は、お互いの素性を知らないまま千風広場で囲碁の対戦を繰り返す。
「わたし」と「私」の短い独白が交互になっていて、十六歳で性愛を知り始めた娘と、冷徹な日本の軍人は、ほとんど言葉を交わさず、ただ次回の対局の約束だけをして別れる。囲碁を打つ以外の「わたし」は学校へ行き、男友達を逢瀬を重ねる。周囲には会ったこともない男と結婚させられそうな美貌の友人や、不実な夫に悩む姉がいる。「私」は農家から一粒残らず食糧を徴用し、戦場で幾人もの中国兵を殺している。千風広場に来たのは、囲碁を打つ人々が日本軍に知られぬよう情報交換をしているのではないかという疑いがあったためだった。
身体は触れ合わないのに、心は近付いていく二人。求め合わないのに、いつの間にか寄り添っている。何も語らないのに、何もかも知っている。激しいが、それが愛と呼ぶかは知らない。
立場が違いすぎる二人の恋だから、すれ違うだけで終われば良かったのに、運命はそれを許さななかった。美しい残酷。
シャン・サは戦争を知らない世代の中国人だが、内容もさることながら、母語ではないフランス語で書いたというのも驚きであった。
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