日記、読書、映画。
機械之心
怪談実話系
2008年 07月 18日 (金) 00:01 | 編集
『幽』編集部編『怪談実話系 書き下ろし怪談文芸競作集』(MF文庫ダ・ヴィンチ)を読む。参加した作家は十人。
怖いというか不気味で、読み終わってからぞっとしたのは、冒頭に収録された京極夏彦の「成人」。
キャラクター岩井志麻子を作家岩井志麻子が書くという趣向なのか、実話なのか判然としないが、この虚実皮膜が面白い「美しく爛れた王子様と麗しく膿んだお姫様」が面白かった。
まさに十人十色。スタイルも視点もそれぞれだった。

虹の集合住宅
2008年 07月 08日 (火) 00:01 | 編集
宇佐美まことの『虹色の童話』(MF文庫ダ・ヴィンチ)を読む。
夫を亡くした千加子は、老いた姑の世話をしながら民生委員をしていた。千加子はレインボーハイツに生活保護を受けている祖父と住んでいて、あまり世話をされていない様子の男児を気に掛けていたが、彼らだけでなく、老朽化したこのアパートに住んでいる数少ない住人は、みな何かしらの問題を抱え不幸の影を携えていた。
美しい名前と裏腹の、淀んだ雰囲気のアパート。子どもを盗られるという妄想に固執する若い母親、夫の連れ子に罵倒される継母、妻に暴力をふるう夫、失業中の中年男……ありふれた不幸だが、集まると言い知れない不吉さを帯びる。レインボーハイツの住人に関わる千加子も、その連なりとは無関係ではいられない。織り込まれた伏線が生きる後半の展開にいやな気分になるが、読むことを止められない。
読み終わってから、レインボー(虹)は雨上がりの空に、僅かな時間だけ現れるはかない存在で、人生もそのようなものという含みがあるのではないかと思った。そんなに悪くない生活を送っていても、明日はどうなるかわからない、一寸先は闇という。

オターマ
2008年 07月 07日 (月) 00:01 | 編集
水沫流人の『マリオのUFO』(MF文庫ダ・ヴィンチ)を読む。
父親の仕事の都合で日本からブラジルにやってきた少年マリオ。父親は工場のそばに柔道場と土俵を作り、柔道とスモウを奨励していたが、ある日、スモウの稽古中に運転手のヒロさんがジョゼを投げ飛ばし、ジョゼは死んでしまう。マリオはジョゼの魂はどこへ行ったのか、どんな姿なのかが気になって仕方なかった。
表題作「マリオのUFO」と短編「リオ・ブランコ」の二作収録。どちらもブラジルが舞台で、作者の分身のような日本人少年が主人公だった。読んでいる間も読んだあとも続く浮遊感は、ブラジルが舞台だからだろうか。照りつける太陽、生き生きと言うよりも猛々しい人間達、生い茂る植物、影の暗さと静けさ。
女性、少女がほとんど登場せず、「マリオ」には、マリオと学校の安藤先生(中年男性)のお医者さんごっこがあったりして、読みようではちょっとエロい。たぶん、作中に死の影が濃いので、生に近いエロスに傾いてしまうのだろう。
オターマ(たましい)を巡るスタンピードにあっけにとられた。素晴らしい。
old Kutani
2008年 06月 21日 (土) 00:01 | 編集
高田宏の『雪 古九谷』(人物文庫)が発掘されたので読んでみることにする。底本は光文社から出た一九八七年の単行本。
アカモロ
2008年 06月 03日 (火) 00:01 | 編集
黒史郎の『黒水(クローズ)村』(一迅社文庫)を読む。
限界集落の庫宇治村(主要な農産物はアカモロ)に農作業ボランティアのために赴いた八人の高校生と引率の女性教師。小説家志望の立花玲佳が主な語り手となって、文明から隔絶した村で体験した恐ろしい出来事を語る。
ライトノベルらしく、わかりやすく性格付けされた登場人物、例えば非常識な金城ゆらぎが出てきて戸惑ったが、それも最初だけだった。日本のどこかで使われていそうな方言、虫が浮いている風呂、口に合わない郷土料理など、背景がきちんと描かれているのが良かった。ホラー映画のセオリーだと、いちゃいちゃしていたり、生意気なことを言ったりする登場人物は惨殺されるが、そこはやや控え目だった。全員きっちり恐ろしい目には遭うのだが。
八人はK県立大平沢井高校商業科の生徒達なのだが、商業科の生徒らしさはみじんもなかった。「おれ、この村から出られたら公認会計士の資格目指すよ」とか、敵に襲われたときにソロバンで身を守るとか、ゆらぎのソロバンケースは”ペ”ではじまるブランドだとか、そういうのがなかったのだけが残念。
本棚から散弾銃
2008年 05月 29日 (木) 00:01 | 編集
COCOの『今日の早川さん 2』(早川書房)を読む。
好みは違うが本好きの五人娘が際限なく喋ったり笑ったり。岡崎京子の『くちびるから散弾銃』を思い出す。
帆掛さんはバイト先の蔵書『ネクロノミコン』を紐解き、読むだけでなく実践し、なにやら見た目は可愛いティンダロスを召喚していた。魂と引き替えに願いを叶えてくれるらしいが、とりあえずはただの同居人に。しかしそれは巻末の「たったひとつの冴えたやりかた」への伏線だった。
新婚の岩波さんの豊満な肉体がすごいのだが、こういう人は出産しても見かけ倒しで意外と母乳が出ないものだと知り合いが言っていた。
遊郭のはなし
2008年 05月 20日 (火) 00:01 | 編集
長島槇子の『遊郭(さと)のはなし』(幽ブックス)を読む。第2回『幽』怪談文学賞長編部門特別賞受賞作。
吉原の遊郭「百燈楼」では、「赤い櫛を拾ったら死ぬ」と語り継がれていた。赤い櫛を見たら手を触れず、なるべく遠くへ逃げなくてはいけなかった。
遊郭に伝わる不思議を、女中が、客が、幇間、花魁が語る。連作短編のようで、一つの長い物語となっていた。語り手の交替がなめらかに行われ、語り手が変わることによって、百燈楼の調度や規模、そこに暮らす人々の様子に別の角度から光が当てられ、脳裏に立体的に浮かんだ。巧みな筆さばきである。
はじめは遊郭の様子に興味を引かれて読み進んだが、いつの間にか嘘か真かの怪異の中に取り込まれ、阿鼻叫喚の惨事の現場に立ちすくんでいた感じ。江戸の吉原に見事に連れて行かれた。でも物語の世界に閉じこめられなくて良かった。
「百燈楼」という名前も、いかにも怪しい。百物語の会で点す、百の灯心を思わせる。

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